中野です。
以前のインターネットの速度測定の自動化の投稿で、インターネットサービスプロバイダー(ISP)の重要指標の1つは通信速度/回線速度と書きました。
今回は、その通信速度/回線速度を維持向上していくために、2020年度から2024年度までの5年間のネットワーク増強やサーバ・インフラ増強・設備更改のロードマップを作成した話です。
ロードマップを作成した背景と目的
通信速度/回線速度の維持向上を実現するためには、トラフィックを常に正確に把握し、またメンテナンス時・障害発生時もトラフィックを溢れさせないよう、余裕をもったネットワークを構築しておく必要があります。
トラフィックは年々増加している状況のため、過去の増加傾向から将来のトラフィックを予測し、その予測をもとにネットワークを増強する必要もあります。
参考までに、シナプスの過去12年間のトラフィック推移と、その傾向から予測した今後5年間のトラフィックは、このようなものとなっています。
過去12年間のトラフィック推移より、当年度時点では、平均して年率1.28倍の増加と予想しています。
ただ、新型コロナウイルスによるテレワークの普及やインターネットの利活用の変化、今後のGIGAスクール構想の実現により、今後のトラフィックは過去の増加率よりも大幅に伸びるとも予想しています。
そのネットワークの増強は、シナプスの所在地である鹿児島から東京・大阪までの専用線の調達や、ネットワーク機器の購入など、すべき事が多々あり、増強検討から増強完了まで1年ほどかかっているのが実情で、これまでは、直近1年ぐらいの需要予測に基づいた計画としていたことで、中長期の視点でみると費用対効果的に非効率な部分もあったため、今回、向こう5年間の計画をロードマップとして作成しました。
そして、このロードマップは下記の3つを大きな目的としています。
- 5年間の需要予測に合わせてネットワーク増強・設備更改を計画的に行う
- 増強・更改計画、予算計画について経営層と合意
- 過小・過剰な投資とならないよう費用対効果の高い計画立案
ロードマップの5つの構成要素
今回作成したロードマップは、シナプスの『サービス運用ガイドライン』をもとに、下記の5つの構成要素に分類し、それぞれ課題抽出とその課題の解決策をまとめたものとなっています。
課題 | 解決策 |
---|---|
性能の維持・向上 | 将来のトラフィック/設備利用の増加傾向を予測し、必要となる性能を確保する |
サービス品質の維持・向上 | ソフトウェア及び機器の劣化、障害発生時の品質低下の発生しうる箇所を抽出し、サービス品質の維持・向上を図る |
運用性向上 | 安定したサービスの提供のため、運用監視体制を見直し、運用負荷低減と運用品質の向上を図るため、新たな運用体制を設計する |
新たな価値の提供 | お客様のニーズや市場動向を把握・分析し、将来必要とされるサービス・システムを導入する |
コスト最適化 | 機器調達、保守契約の内容を見直し、コスト最適化を図る |
ロードマップの一部を紹介
作成した5年ロードマップは、ネットワークやサーバ、インフラ、運用体制までと多岐にわたり100ページほどの量となっていますが、ここではネットワーク増強の一部の計画について、紹介します。
2020年4月時点の構成
2020年度計画
2021年度計画
2022年度計画
2023年度計画
2024年度計画
まとめ
今回ロードマップを作成したことで、これまで検討不足だった下記のような点について、認識を新たにすることができました。
- ネットワーク増強の時期と、ネットワーク機器のリプレース時期を考慮した、ネットワーク全体の更改のあり方
- 物理サーバのリプレース時期と、サーバOSのアップグレード時期を考慮した、サーバインフラ全体の更改のあり方
一方で、向こう5年間の計画を高い精度で作り上げる事は難しいことも事実で、今後は毎年、前年度の進捗の振り返りと、ロードマップの修正を行っていく必要があると理解しました。
シナプスでは、今後も安定したサービスを提供できるよう設備増強・帯域増強を進めてまいります。