技術部ネットワーク課の若松です。
私は、これまで電気通信系の国家資格を取ろうと思い受験をしてきました。
今回試験勉強をする際に、自分なりに工夫したことをご紹介したいと思います。 当然「これをやれば必ず合格」という内容ではなく、「厳密にいえば少し違う」という表記もあろうかと思います。 また試験制度も随時変更されることが考えられます。 あくまでも、個人的見解、無保証ですのでご承知おきいただければと思います。
資格と免許
資格とは
資格とは各種分野における個人の能力、知識が判定され、特定の職業に従事しうることを証明するものです。 しかしこの説明だと、「単に経験に基づく知識/技量があること」と「資格を持っていること」は同列に扱われそうですが、実際には特定の業務をするにあたって特定の資格が必須な場合も多々あります。
免許とは
一般に禁止・制限されている行為を行政機関が特定の人に対して許可するものです。例えば自動車運転免許証などがそうで、無免許でバイクや自動車を運転することはできません。
電気通信系国家資格
今回以下の3つをご紹介いたします。
電気通信主任技術者
電気通信主任技術者は、電気通信ネットワークの工事、維持及び運用の監督責任者です。 種類としては「伝送交換主任技術者」と「線路主任技術者」があります。
工事担任者
電気通信の工事担任者は、電気通信回線に端末設備、又は自営電気通信設備の接続工事を行い、又は監督する役割を担っています。 種類としては「総合通信」、「第一級アナログ通信」、「第二級アナログ通信」、「第一級デジタル通信」、「第二級デジタル通信」の5種類です。
無線従事者
無線従事者とは、無線設備を操作したり監督をしたりするために総務大臣の免許を受けたものをいいます。
種類としては23種類あり、免許の種類により出来ること(扱える設備規模や周波数、通信方式、出力など)が異なります。当然ですが試験の内容/難易度もさまざまです。
試験勉強の際に心がけたこと
ここからは試験勉強を繰り返すことで身に着けたことを紹介します。
過去問と解説本を用意する
試験勉強をするにあたってやはり問題の内容や出題傾向の把握は大切です。 出来れば過去問10年分くらいとそれを解説している本(出版社の異なるもの)を2種類用意しましょう。 2種類用意する理由は片方の解説で理解できなくても、もう片方の解説で理解できるということがあるからです。
過去問を分析する
過去2~3年前に出た問題はほぼ出題されることはないので勉強範囲から除外します。 また法令改正があった場合も改正から2~3年後までは出題されないのでそれも勉強範囲から除外します。 こうやって勉強する範囲を絞ります。
科目合格を活用する
各試験は3~4科目あり、すべての科目が合格基準に達しないと試験合格になりませんが、なかなか一度で全ての科目で合格することは困難な場合もあろうかと思います。 今回紹介する3つの資格(無線従事者は一部資格に限られます)については、その点に配慮した科目合格制度があり、いずれの試験も試験が行われた月の翌月の初めから起算して三年以内なら既に科目合格した科目の再受験を回避(!)することが可能です。
参考
電気通信主任技術者規則 第十条(科目合格者に対する試験の免除)
(科目合格者に対する試験の免除) 第十条 試験において合格点を得た試験科目のある者が当該試験の行われた月の翌月の初めから起算して三年以内(総務大臣が天災その他の非常事態により試験が行われなかつたことその他特別の事情を考慮して別に告示して指定する者については、当該試験の行われた月の翌月の初めから起算して三年を経過した後において最初に行われる試験の実施日の属する月まで)に試験を受ける場合は、申請により、別表第二号の区別に従つて、試験科目の試験を免除する。
工事担任者規則 第八条(科目合格者に対する試験の免除)
(科目合格者に対する試験の免除) 第八条 試験において合格点を得た試験科目のある者が当該試験の行われた月の翌月の初めから起算して三年以内(総務大臣が天災その他の非常事態により試験が行われなかつたことその他特別の事情を考慮して別に告示して指定する者については、当該試験の行われた月の翌月の初めから起算して三年を経過した後において最初に行われる試験の実施日の属する月まで)に試験を受ける場合は、申請により、別表第一号の区別に従つて、試験科目の試験を免除する。
無線従事者規則 第六条(科目合格者等に対する免除)
(科目合格者等に対する免除) 第六条 次に掲げる資格の国家試験において合格点を得た試験科目(電気通信術を除く。以下この項において同じ。)のある者が当該試験科目の試験の行われた月の翌月の初めから起算して三年以内(総務大臣が天災その他の非常事態により試験が行われなかったことその他特別の事情を考慮して別に告示して指定する者については、当該試験の行われた月の翌月の初めから起算して三年を経過した後において最初に行われる試験の実施日まで)に実施される当該資格の国家試験を受ける場合は、申請により、当該合格点を得た試験科目の試験を免除する。 (以下略)
科目合格を活用することで集中的に勉強し、1つずつ科目合格を重ね3年プラスα以内の期間で合格するということが可能です。 なお、注意すべき点はこれらの科目合格を活用する際は必ず受験申込時に申請が必要である、ということです。
他資格による科目免除を活用する
電気通信主任技術者、工事担任者、無線従事者(一部資格に限る)ともに他の資格を持っていることで受験科目の免除を受けることが出来ます。 例えば
伝送交換主任技術者を持っていると、
- 第一級陸上無線技術士の「無線工学の基礎」と「無線工学A」が免除。
- 工事担任者の「基礎」と「法規」が免除。
無線従事者(第一級/第二級陸上無線技術士)を持っていると、
- 電気通信主任技術者の「電気通信システム」が免除。
- 工事担任者の「基礎」が免除。
工事担任者(総合通信/第一級アナログ通信/第一級デジタル通信)を持っていると、
- 電気通信主任技術者の「電気通信システム」が免除。
となります。
参考
電気通信主任技術者規則 第十一条(一定の資格を有する者に対する試験の免除)
(一定の資格を有する者に対する試験の免除) 第十一条 一の種類の資格者証の交付を受けている者が、他の種類の資格者証に係る試験を受ける場合は、申請により、別表第三号の区別に従つて、試験科目の試験を免除する。 2 工事担任者資格者証の交付を受けている者及び電波法第四十一条の規定により無線従事者の免許を受けている者が試験を受ける場合は、申請により、別表第四号の区別に従つて、試験科目の試験を免除する。
工事担任者規則 第九条(一定の資格等を有する者に対する試験の免除)
(一定の資格等を有する者に対する試験の免除) 第九条 工事担任者が他の試験を受ける場合は、申請により、別表第二号の区別に従つて、試験科目の試験を免除する。 (以下略)
無線従事者規則 第八条(一定の資格を有する者に対する免除)
(一定の資格を有する者に対する免除) 第八条 一定の無線従事者の資格を有する者が他の資格の国家試験を受ける場合は、申請により、別表第一号の区別に従って、国家試験の一部を免除する。 2 一定の無線従事者の資格及び業務経歴を有する者が他の資格の国家試験を受ける場合は、前項の規定にかかわらず、申請により、別表第二号の区別に従って、国家試験の一部を免除する。 3 電気通信事業法第四十六条第三項(同法第七十二条第二項において準用する場合を含む。)の規定により電気通信主任技術者資格者証又は工事担任者資格者証の交付を受けている者が国家試験を受ける場合は、申請により、別表第三号の区別に従って、国家試験の一部を免除する。
1つ試験に合格して資格を取得した後は、勢いで他の資格も取得してしまうのが手っ取り早いとも言えますね。 こちらも科目合格同様、試験申込時に申請が必要です。
数学に慣れる
今回ご紹介する試験は、幅広く「計算問題」が出ます。 例えば以下のような計算です。
これらは解説本などを読むと分かったような気にはなるのですが、実際に問題と向き合うと全く解けない場合があります。 計算問題は解くことが出来れば点数につながるサービス問題と捉え、鉛筆と紙を用意し必ず正解を導きだすところまでを反復しましょう。 実際の試験では時間に限りがありますのでスピーディに計算できることも大切です。
電気数学に慣れる
前項の「数学に慣れる」の時点で既にめまいがしている方もいらっしゃると思いますが、試験には必ず電気に関する問題が出題されますので、以下のような法則の理解や計算方法の習得の必要もあります。
なかなか大変だと思いますが、初歩的なところから1つ1つ理解してくことが大切です。 この点に関しては個人的には高校で電気を習っておいてよかったと思っています。
ギリシア文字に慣れる
電気関係の計算式(公式)はギリシア文字がつきものです。 例えば、以下のようなものです(カッコ内は意味や用途です)。
- π:パイ(円周率 3.141592 ...)
- λ:ラムダ(波長)
- ω:オメガ(角速度)
- Δ:デルタ(微小変化)
- θ:シータ(角度)
こういうギリシア文字は読み方が分からないと全く頭に入ってきませんよね。 それと、なぜそのギリシア文字を使うのかは理解する必要はありません。 円周率πもなぜπなのかは考える間もなく中学校で習ったと思います。
ちなみにギリシア文字「Ω」は、大文字では「Ω(オーム)」と読み電気抵抗の単位となるのに対して、小文字は「ω(オメガ)」と読み角速度(=2πf)を表します。大文字か小文字かで読み方も用途も異なり、なかなかややこしいです、、、が深く考える必要はありません。そういうものだと考えてください。
モチベーションを維持する
試験勉強は仮に大きな見返りがあったとしても、周囲に志を同じくする人(つまり良きライバル)がいない限り、大変つらく孤独なものです。
いつも頭の片隅に「勉強しないとなぁ」という思いがあるものの、ついつい別のことを(テレビを見たり、スマホをいじったり、あげくには部屋の掃除をし始めたり)しがちです。 そして受験日が近づくにつれ焦りとあきらめの気持ちが出てきます。
どうやってモチベーションを維持するのかは大きな課題ですが私は以下のようなことを意識しました。
- 30分や1時間など時間を区切って勉強する。
- 合格した時の自分へのご褒美を考えておく。
- 仮に科目合格の気配すら感じられない場合でも必ず試験会場に行き受験する。
- あきらめる。
「時間を区切って勉強する」は、勉強内容がその時点で無理難題である場合、長時間取り組むのはかなり自虐的なものと言えますし、まとまった時間を確保することも難しかったり、集中力も続かない場合があるためです。
「自分へのご褒美」ですが、例えば大型家電やPCを買い替えるとかでもいいですし、車やバイクを買う、でもいいでしょう(自己満足に浸る(!)ため消耗品よりも長く身近に使えるものがオススメです)。 あるいは勉強のための時間確保に協力してくれた家族への感謝の気持ちのお返しとして旅行や外食に行くのでもいいでしょう。
「必ず試験会場に行き受験する」は次回受験につなげるための動機付けです。他の受験者の年齢層を見てみるのもいいでしょう。
「あきらめる」は例えば3回受験して1つも科目合格にもならない場合は、一度あきらめて時間をおきます。やがて時間の経過とともに、理解が困難だった内容も不思議とすんなり頭に入ってくる来ることもありますし、試験制度(年間の試験回数や試験の難易度)が変更になり受験しやすくなっている場合もあります。
最後に
今回このブログを書くにあたって過去受験した国家資格の試験制度等について調べてみたのですが、資格名や種類など変わっているものもあり、改めて知識をアップデートすることが出来ました。 また今はどの資格についてもYoutubeなどで解説動画を見ることが出来、またCBTでの受験も一部可能になるなど、以前よりも遥かに勉強や受験がしやすくなっていると感じました。 過去問や解説本も必ずしも紙の本ではなく電子書籍的なものでもいいでしょう。
これだけ書いておきながらですが、最近あまり試験を受けていないので、また何か目標を設定して取り組んでみたいと思います。 電気通信系とは関係ありませんがドローンの操縦士とか面白そうです(不器用なので実地試験がどうなるか分かりませんが)。