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マルチギガビット・イーサネットの通信速度はどのようにして実現しているのか?

技術部ネットワーク課の二之宮です。

はじめに

ふと、1 Gbps でもなく 10 Gbps でもない、2.5 Gbps や 5 Gbps のマルチギガビット・イーサネットの通信速度はどのようにして実現しているのか気になりましたので調べてみました。

マルチギガビット・イーサネットとは

最大通信速度 1 Gbps のギガビット・イーサネット向けのカテゴリー5e またはカテゴリー6 の LANケーブルで、2.5 Gbps や 5 Gbps の通信が可能なイーサネットの規格で 2016年に制定されました。

マルチギガビット・イーサネット登場の背景

2013年に実行速度が 1 Gbps を超える無線LAN規格 IEEE 802.11ac が制定されるなどして、ギガビット・イーサネットの最大通信速度 1 Gbps では足りなくなりました。

規格 最大通信速度 制定時期
IEEE 802.11n 600 Mbps 2009年
IEEE 802.11ac 6.9 Gbps 2013年

802.11ac はギガビット・イーサネットの上位規格 10ギガビット・イーサネットで対応可能ですが、広く普及しているカテゴリー5e やカテゴリー6 の LANケーブルが使用できませんので、LANケーブルを張り替える必要があり、対応に多くの時間と費用が掛かってしまいます。

そこで、カテゴリー5e またはカテゴリー6 ケーブルのままで 1Gbps を超える 2.5 Gbps や 5 Gbps の通信が可能な規格マルチギガビット・イーサネットが登場しました。

そもそも 2.5 Gbps や 5 Gbps って何?

1秒間に転送されるビットの数です。
2.5 Gbps の場合 1秒間に 25億ビットの転送が可能です。
5 Gbps の場合 1秒間に 50億ビットの転送が可能です。

ビットって何?

2進数の1桁のことで 1 か 0 です。
2.5 Gbps の場合、1 か 0 の数値を 1秒間に 25億個転送できます。

1 か 0 の数値をどうやって送るの?

0 と 1 を電圧の変化に変換してケーブルを通して送ります。

イメージ図

ギガビット・イーサネットの通信速度

1秒間に 10憶回電圧の上げ下げをすれば 1秒間に 10億ビット送ることができるので、通信速度 1 Gbps を実現できそうです。

ところが、

1秒間に 10憶回の電圧の上げ下げ = 周波数 1 GHz

となり、ギガビット・イーサネット用のカテゴリー5e ケーブルが対応可能な最大周波数 100 MHz を大きく上回るので、このままでは通信速度 1 Gbps は実現できません。

そこで、ギガビット・イーサネットでは 1回の電圧の上げ下げの中で 5段階の電圧を使用するなどして 1 ビッドではなく複数のビットを送れるようにしました。

このことにより、1秒間に 10憶回必要だった電圧の上げ下げが 1億回以下で済むようになり、最大周波数 100 MHz のカテゴリー5e ケーブルでも通信速度 1 Gbps を実現できるようになりました。

マルチギガビット・イーサネットの通信速度

マルチギガビット・イーサネットは 10ギガビット・イーサネットの技術をそのまま使用しています。

10ギガビット・イーサネットでは、1回の電圧の上げ下げで 16段階の電圧を使用するなどして、ギガビット・イーサネットよりさらに多くのビット数を送れるようになっています。

マルチギガビット・イーサネットもこの技術を使用して動作周波数を Cat5e や Cat6 ケーブルの最大周波数以下まで落とし 2.5 Gbps や 5 Gbps の通信速度を実現しています。

規格 動作周波数 LANケーブル規格(最大周波数)
10GBASE-T 400 MHz Cat6A (500 MHz)
5GBASE-T 200 MHz Cat6 (250 MHz)
2.5GBASE-T 100 MHz Cat5e (100 MHz)

まとめ

マルチギガビット・イーサネットは、通信速度 10 Gbps の 10ギガビット・イーサネットの技術を流用し、10ギガビット・イーサネットの動作周波数 400 MHz をカテゴリー6 やカテゴリー5e の最大周波数以下の 200 MHz または 100 MHz に減らすことで、通信速度 5 Gbps や 2.5 Gbps を実現していることが分かりました。

終わりに

ふと気になって調べた程度でしたので、符号化などの難しい話は思いっきりすっ飛ばしましたが、折を見て調べてみたいと思います。

参考文献